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【第4回】コーディネーターって、何してるの?

井手上春香(いでがみ はるか)
NPO法人子どもとアーティストの出会い理事長

掲載日:2011年08月25日


最近、「コーディネーターって、どんな仕事なんですか?」と聞かれることが、増えてきました。私自身は、子どもを対象としたワークショップのコーディネーターとして、アーティスト、学校、企業、行政、地域の方をつなぐ役割をしています。普段は表から見えない仕事ゆえに目立つことはありませんが、ワークショップの醍醐味を誰よりも享受しているひとりです。今回は、私がどのようにコーディネートの仕事をすすめているか、ご紹介したいと思います。

コーディネーター、みつける。

企画のはじまりは、まず「みつける」ことから。それはアーティストがふと発した疑問だったり、子どもの遊び方だったり、先生がぽつりと漏らしたつぶやきだったり。そんな小さな「声」から、企画は生まれます。大切なのは、その小さな「声」を聞き漏らさず、「えっ!それって、どういうこと?」と反応し、深めていくことです。

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現職教員を交えた定期勉強会を開催し、今日の教育現場でのニーズを聞き取ります。

コーディネーター、悩む。

まだ、誰にも届かない小さな「声」。まずはその「声」がどんな背景から生まれたのかをリサーチし、いろんな人の意見を聞いて練りあげ、企画のコンセプトを決めます。これが企画の「種」なります。ただし、「種」のままでは多くの人の共感を得ることは難しく、社会に広げていけません。そこで、教育関係者や行政、企業、地域の方などに対して、この「種」を育てればどんな「花」が咲くのか、そのためにはどんなモノや環境、資金が必要なのか、分かりやすく伝える資料を作ります。そのときに大事なのは、伝えたい相手にあわせて表現方法を変えること。学校、企業、行政、地域の方...それぞれ違ったフィールドの方が理解しやすく、やってみたいと思える資料を揃え、時間をかけてコミュニケーションをとりながら話をすすめます。

コーディネーター、走る。

協力してもらえる人や環境が整ったら、いよいよ具体的な準備に入ります。ここでは、ひたすら実務作業。電話をかけ、電卓を打ち、チラシをつくり、安全対策をし、スタッフを集めて役割分担をします。とにかく、ワークショップに関わるすべての人が気持ちよく、そして当日がスムーズに運営できるように最善を尽くします。小さい仕事の集積が大きな意味を持つ期間です。そして、この期間が最もトラブルが起こりやすく物理的にもハードなため、無事に乗り切るためには気力と体力が欠かせません。

コーディネーター、見つめる。

いよいよ迎えたワークショップ当日。天候、子どもの当日の健康状態、準備や段取りの最終チェック、見学者や取材への対応。そのひととおりを終え、ワークショップがスタートしたら・・・コーディネーターはただひたすら、ワークショップを見守ります。途中で想定外のことが起こっても、よほど危険なことが発生しない限り手出ししません。この時に大事なのは、子どもたちの反応や表情の変化、ワークショップの雰囲気を集中して見つめることです。そして、どんなことが起こったかをしっかり記憶しておきます。

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子どもたちに、どんな変化があるか見つめます。

コーディネーター、進む

ワークショップが終わった後は、すぐに子どもたちや関係者の感想を聞きます。「楽しかった!」「すごかった!」という感想も嬉しいですが、「よく分からなかった...」という困惑の声もまた、大事なものです。それらの声は反省会の席で話題に上げるようにします。興味深いのは、ワークショップが終了した直後より、1~2週間たってからの感想です。ワークショップが子どもたちに与える影響は、しばしば時間がたってから表れます。終了直後とは違った感想が出てきたり、クラスの関係性が変化していることがあります。

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びっしりと書かれた子どもたちの感想。ひとつひとつから、思いを読みとります。

すべてのプログラムが終わった後は、子どもたちはもちろん、そのワークショップに関与した人たちが、体験を共有して、距離がぐんと近くなっています。顔を合わせれば、「あの時はああだった、こうだった」「これはすごかった、あれはもっとできた」と、みんなが語り合っています。こうなれば、もうコーディネーターは必要ありません。みんなの様子を見ながら、次の企画を考えはじめます。こうやって生まれた「幸せな出会い」をどう広げていくことができるか?また、まだ体験したことのない人たちに、どう伝えていけるか...。

さいごに

コーディネーターの仕事、イメージして頂けましたでしょうか。もちろんこれはひとつの例で、いろいろなコーディネートの方法があります。ただ、すべてにおいて言えるのは、コーディネーターが、ワークショップに関わるすべての方に寄り添って気持ちや意見を汲み取り、ひとつのワークショップが成立するまでの全プロセスに関わっているということです。そういう意味では、ワークショップを一番楽しみ、成長していけるのは、誰よりもコーディネーターなのかもしれません。

井手上春香(いでがみ はるか)
NPO法人子どもとアーティストの出会い理事長

1980年大阪生まれ。舞台公演の制作、美術館でのワークショップ等のスタッフや中学校での非常勤講師を経た後、2003年「トヨタ・子どもとアーティストの出会in京都」実行委員会に参加。2004年4月「子どもとアーティストの出会い」を発足。2008年8月同団体をNPO法人化。小・中・高等学校や児童館におけるワークショップのコーディネート、教育とアートの関わりをテーマとした教員・保護者向け研究会を企画運営。

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